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2014年5月

2014年5月29日 (木)

こまい縄(komai-nawa)を手の平で綯う

こまい縄(komai-nawa)を手の平で綯う

Time-stamp: "Sun Nov 03 11:45:16 JST 2013"

藁縄のうち、「こまい縄」(komai-nawa)と呼ばれる土壁の下地になる竹小舞 を編む(小舞をかく)ための細い(直径4~5ミリくらい)藁縄を手の平を使って 綯う。

ホームセンターで売っているごくありふれたロープを観察してロープのつく り(出来上がり姿)をイメージする。繊維(fiber、ファイバー)を撚り合わせ てヤーン(yarn)をつくる。これは一本の糸に見える。ヤーンを複数本撚り合 わせてストランド(strand)をつくる。ストランドは、これ自体で細いロープ に見える。ストランドを、例えば3本撚り合わせて最終製品のロープにな る。ヤーン、ストランドの分かりやすい和訳用語はない。製品を親縄と呼ん だら、ストランドは子縄、ヤーンは糸でファイバーを綿と思えばよさそう。

(注)製糸・織物の技術は外国(イギリス)にならったものであるため用語を和 訳しないでそのまま使っている例が多い。技術の先進国である国ほど、もの に固有の名前を付けている。日本語の牛が英語では、cow, ox, bullなどと なるように。(注終わり)

ここで大事なことは、ヤーン、ストランド、ロープの各段階での撚りの回転 方向が、例えば、右回り→左回り→右回りのように互い違いに逆回りになる ことである。ロープが引っ張られるとロープの撚りが戻る(解ける)方向に回 転する。ヤーン、ストランド、ロープそれぞれの撚りを交互に逆にすること で撚りを戻そうとする力を打ち消してロープが回転しないようにする。

左回りや右回りという表現は取り違えやすい。回転方向は視点を指定しない と決まらない。空間における左・右が決まらないのと同じ事情がある。

空間の上下軸と前後軸が決まれば、それらの二軸に直交する三番目の軸とし て左右方向の軸が決まる。上下は重力の方向である。物が重力で落ちてゆく 方向が下である。前後は自然な(楽な)姿勢で見えるのが前で、首を回して振 り返る方向が後ろになる。三番目の左右軸のどちらを左に、どちらを右にす るかは決められない。

人間の身体は左右対称であってカニのシオマネキのオスのような片方のハサ ミ脚が極端に大きいというような目立つものはない。首を左に向けるのと右 に向けるのに目立つほどの違いは感じない。肩こりでもないかぎり、左には 楽に向けられるが右へは重いということはない。前を向いている頭を回して 後ろを振り返るときほどの違いがない。真後ろに向くには首を回すだけでは ダメで身体もよじることになる。右手に持っているものを手から放すと左に 落ちてゆく(ころがる)ことはない。右を右と名付ける拠り所がない。

北に向いている人から見て朝日が登ってくる方向を東、そしてその方向を右 と決めることはできる。しかし、人は何時でも北を向いているわけではな い。南に向いたら、お日様が沈む西が右であると翻訳しなければならない。 左・右の(区)別は、「右」と指図されたら瞬時に右に向けるようでなければ 困る。

そこで大多数の人(右利きな人)が、お箸やナイフを持つ手を右として身体に 結び付けて覚え(させ)る。毎日三度の食事に使うお箸やナイフを持つ手を忘 れることはない。身体(右手)に右の印を付けてしまえば、本人が東西南北ど ちらを向いても反射的に右が分かる。

これでとりあえず左と右を区別できるようになった。ここで注意すべきこと は左右を判断する人の視点(どの方向からどの方向にある対象物を見ている か)を指定することである。

ステージで演技する役者にとってのステージ上の左右と、客席から指示する 監督や役者の演技を見る観客から見たステージ上の左右は逆になる。観客か ら見たステージの右は、観客に向き合う役者の左になる。役者と監督で行き 違えのないようにするためにステージに印を付ける。監督から見てステージ の右を上手(かみて)とし左を下手(しもて)とする。上下(かみしも)の区別 は、殿様及び家老とその他下々の家来が相対するときに、殿様の左に座る左 大臣の位が右大臣より上位であることにならうものだろう。

ステージ(舞台装置)という品物そのものにカミテ・シモテの呼び名を付けて しまう。役者も監督もステージ上の左右をそれで示すことにすれば行き違 い・勘違いは起こらない。

空間の左右でさえこれほど難しい。回転方向の左右はもっと難しい。私は次 のように覚えている。地面に垂直な杭が立っているとイメージする。右手で 杭を掴んだままで杭の回りを歩いて回る。その杭の根本に文字盤の中心があ る巨大な時計を思い浮かべる。自分は巨大時計の文字盤の上を歩いていると 思う。杭の回りを歩くときの回転方向は、右手で杭を掴んでいるから右回 り、巨大時計の針の回転方向と同じだから時計回りとする。

地上に立てた杭の周りを回る向きが左回りであるか右回りであるかを言うに は、回転方向を見る人の視点の場所をはっきりさせることが大事である。実 際に杭を回っている本人の視線、あるいは上空からその様子を見下ろしてい る人から見た回転方向とするのが普通である(当たり前のこととしてはっき り言わないことが多い)。もしかしたら、そうでないかもしれない。二階の ガラス製の床面に立てた杭の周りを回る人を一階から見上げる。二階の床面 に立てた杭の周りを回っている本人が思う回転方向と一階からガラス製の天 井(二階の床)を通して下から見上げている人が感じる回転方向は逆になる。

ロープの撚りの回転方向は、それを見る視点を指定しなければ決まらない。 また、ロープをつくりながらロープが伸びて長くなってゆくときのストラン ドの回転を言うのが当たり前だろうが、ロープが解(ほど)けてゆくのをイ メージする変人が居るかもしれない。ことほどさように撚りの回転方向は一 筋縄とはいかない。

撚りの回転の左右ではなくてロープを上下にぶら下げたときのストランドの 斜め方向が左下から右上(Z撚り)か、または左上から右下(S撚り)であるかに 着目する。アルファベットのZとSの中程の部分の斜め具合のどちらであるか を指定する。ロープの上下を取り替えてもZであるかSであるかは変わらな い。

人間の右手に「お箸やナイフを持つ手」という印を付けたり、ステージとい う装置にカミテ・シモテと呼び名を付けたように、ロープのストランドの斜 め具合をZまたはSで呼ぶわけである。こうすれば、どの方向から見たときの 撚りの回転方向であるかを言わなくてすむ。従来、左撚りや右撚りと呼んで いたのをZ撚りとS撚りで再定義している。

ホームセンターで売っている工業製品なロープはZ撚りである。その昔の米 俵を縛っていた藁縄はS撚りである。米俵を見掛けることはないが飾りとし て米の入ってないものが売られている。藁縄は園芸方面では現役だろう。ど ちらもネットショップにある。製品写真からS撚りであることが分かる。

神様向けの注連縄のZ撚りを日本では左撚りと呼ぶ。実用品としての藁縄のS 撚りは右撚りという。神様に敬意を表して実用品とは逆向きな撚りになって いるという事情があるらしい。なお、横綱力士が締める綱もZ撚りである。

ややこしいことに日本語サイトと英語サイトで左撚りと右撚りが逆転してい る。英語サイトの殆どはZ撚りを右撚り、S撚りを左撚りとしている。英語サ イトでも、ごく少ないサイトはZ撚りを左撚り、S撚りを右撚りとしている。 日本語サイトの殆どは「Z左、S右」となっている。英語サイトでも布の縫い 糸では日本式が多い。工業製品のロープやワイヤロープは「Z右、S左」にな るという混み入ったことになっている。

こまい縄(komai-nawa)は、藁の二、三本をストランドとし、そのストランド 二本を撚り合わせてロープ(こまい縄)にする。このときロープの撚りとスト ランド自体の撚りは逆にする掟がある。こまい縄(ロープ)は二本のストラン ド(藁の二、三本)をS撚りにする。そしてストランド(藁の二、三本)自体はZ 撚りにする。

こう書くとややこしそうだが、手の平を使う手綯いでは、ストランドを撚る 作業とロープを撚る作業を交互に自然で滑らかに連続する形の手の動きで実 現するので難しくはない。こまい縄を手綯いする動画を見ても何をやってい るのかが分からないくらい、さりげない(簡単な)動きである。

藁の束(偶数本の藁、4~6本くらい)を二つに分ける。それぞれを左右の手の 親指と人差し指の股に挟む。ここから先は右利き向けな手さばきになる。左 手を固定気味として右手を大きく(主に)動かすことになる。

前方に差し出した左手の平に重ねた右手の平をやや上向きに手前に引き寄せ る。左手の平が二本のストランド(藁の二、三本)がつくる「Y」の字形を横 (斜め左下ぎみ)から握るような形(実際に握るのではなく手の平は開いたま ま)になる。なお、「Y」の字形の下の縦線はすでに出来上がったロープであ る。

親指と人差し指の股で挟んでいるストランド(藁の二、三本)を解放する。手 前に引き寄せた右手の平を左手の平(固定側)にこすり合わせて前方に滑らす (いわゆる揉み手である。寒いときに両手の平を擦り合わせる動き)。このと き「Y」の字形の上二手に分かれたストランドのそれぞれにZ撚りがかかる。 「Y」の字形の下の縦画部分はすでにロープになっている。

出来上がりずみのロープ(綯い始め)は人間が重石となって(脚とか尻の下に 敷く)固定している。「Y」の字形の下の縦画部分には両手の平の揉み手で撚 りがかからないよう滑らす。右手の平を左手の平とこすり合わせて手前から 向こうに動かす動作は、二本のストランド(藁の二、三本)にZ撚りをかける 作業である。

左手の平から突き出した右手の平に近い向こう側のストランドを右手の親指 と人差し指の股で挟む。手前にあるストランドを左手の親指と人差し指の股 で挟む。そうしたら向こうに突き出している右手を手前に引き寄せる。右手 のストランドと左手のストランドの手前と向こうを入れ替える。つまり、手 の平の間に挟む「Y」の字形の上にある斜めな二本を交換する。こうして ロープ(二本のストランドどうし)にS撚りがかかることになる。

この動作を繰返す。なお、藁の長さには限りがあるので適切に継ぎ足しなが ら作業を続ける。

(注)手の平を使うこまい縄(komai-nawa)つくりの作業では両手の平をこすり 合わせる揉み手動作において利き手な右手を主に動かす。右手を向こう側に 動かして右手近くのそばにあるストランド(藁の二、三本)をつかんで手前に 引き寄せる。右手でストランドを引き寄せることから右綯いと言う。これは 手綯い専用の表現になる。分かりやすい表現かもしれない。(注終わり)

文字で作業を説明するには無理がある。図解しても分かりにくい。三次元の 広がりのある作業は動画を見るのが一番である。

さらに藁を使って実習すべきだが、手元に藁が無くて「エアー藁縄綯い」 (イメージトレーニング)しかできなかった。およそ50年前の小学生から中学 生くらいに、こまい縄(komai-nawa)をつくったことはある。当時、Z縄が神 様用でS縄が実用品なんてことは知らなかった。

  • 縄ない
    http://www.youtube.com/watch?v=-u2ZYuoCRmE
    売木村『食・農体験モニター』にて脱穀した後の藁で縄ないに挑戦!
  • 縄ないおばあちゃん(匠の技)
    http://www.youtube.com/watch?v=whSQYGnk9sc
  • キャンプで縄ない(ロープ作り)(図解による説明)
    http://outdoor.geocities.jp/harak60/nawa.htm
    (注)藁の代わりに竹の棒で説明している。竹の棒を使うことで子縄(ストラ ンド)に撚りの掛かることがよーく分かる。なお、このページにおける子縄 (ストランド)はS撚りで藁縄(親縄)はZ撚りになっている。日本式な藁縄はS 撚りである。(注終わり)
  • わら縄作り straw rope
    http://www.youtube.com/watch?v=fJreE8hHfPQ
    (注)前半はS撚り(和式の右綯い)で藁縄をつくる。終わりにZ撚り(和式の左 綯い、神様用)になり次の字幕が入る。「(字幕始まり)しめ縄など、神様に 用いるものは日常の縄とは逆にもみ上げて撚る。撚りにくいため、そのぶん 気持ちをこめなければならない(字幕終わり)」ここに言う「もみ上げて撚 る」は固定気味にした左手の平に対して右手の平を上(手前)に擦り上げるこ とである。
    日常は固定した左手の平に対して右手の平を押し下げるように動かす。「押 してもダメなら引いてみな」というくらいだから「押す」ほうが「引く」よ り楽なのだろう。固定した左手の平に対して右手の平を擦り合わせるのは右 利き向けな動かし方のようである。右利きの人は、左手でモノを支え、その モノに対して右手を動かして作業(細工)する。
    ところで両手の平をS撚り(和式の右綯い)に擦り合わせるときに二つの藁束 (小縄、ストランド)のそれぞれはz撚りに撚られる。手綯いにあっては小縄 (藁の二、三本)の撚りとそれらでつくる大縄(藁縄、ロープ)の撚りを逆向き にすることが意識しなくても自然に行なわれる。(注終わり)
  • 綯うってなあに(how to make ropes)みちくさあん(道草庵)
    http://www15.plala.or.jp/amayokasim/nau.html
    日本では一番ポピュラーな方法(掌(手の平、palm)で綯う写真解説)
    1.繊維素材を二束に分ける。(写真は藁)
    2.繊維の下部を両足の間に挟み、両方の手に一束ずつ握る。
    3.右手に持った繊維束を左手の上に持ってくる。
    4.右の掌を右方向へこするようにして、二束を同時にそれぞれz撚りに撚る。
    5.右側の繊維を右手の親指ではさみ、左右の束を交代する。
    6.3.の位置に戻り、繰り返す。縄はS撚りに撚れる。
    (引用終わり)
(注)日本式な手の平を使う藁縄の綯い方を紹介する英語サイトが見つからな い。稲作地帯なら藁縄を使うはずである。太さ8~10ミリくらいの藁縄をつ くる機械の紹介はあるけれど、手の平で綯う日用品としての細い藁縄 (komai-nawa)の作り方を解説した英文ページがない。上記の「みちくさあ ん」の記事が唯一の英文併記である。

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