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2012年7月

2012年7月30日 (月)

一太郎(ichitaro)のエスケープメニュー(escape menu)

一太郎(ichitaro)のエスケープメニュー(escape menu)

Time-stamp: "Tue Nov 15 13:30:56 JST 2011"

パソコンのソフト(ここではワープロソフトで考える)を操作する手段として キーボードしか使えない場合の大問題は、文字入力のためのキーボードを編 集コマンドの入力にも使うことである。同じキーが、或るときには編集画面 への文字入力になり別のときには編集コマンドの指定になるという二重使用 である。ワープロ専用機にはワープロのための機能を割り付けた専用キーが 幾つか用意されている。パソコンでワープロソフトを使う場合はワープロ向 けな専用キーはない。

機械式英文タイプライターを使ったことのない者には、パソコンのキーボー ドのQWERTY(クワーティ)式のキー配列が憶えられない。ローマ字入力ならあ のなんともみょうちくりんなアルファベットのキー配列を憶えなければなら ない。仮名入力するとしても「たていすかんなにら」式の英文配列キーボー ドに無理矢理にはめ込んだと思われる無秩序な並びの、かな配列を憶えなけ ればならない。

編集画面への文字入力にはならない編集コマンドを指示するにもアルファ ベットキー(アルファベットと一緒に仮名もキートップに刻まれているが、 割り付け機能が英単語由来であるため記憶の助けにはならない)を押さなけ ればならない。たいていは編集コマンド名を意味する英単語の頭文字を割り 当てるけれど英語にうとい者には複写→コビー→copy→Cというニーモニッ ク(mnemonic、記憶の助けとなる)が思い浮かばない。コピーのような年寄り でも知っている平易な英単語ならよいが編集のeditとなるとかなり通りが悪 くなる。

そして日本語文は漢字仮名混じり文である。仮名入力を使うとしても漢字変 換により適切に漢字化する必要がある。その昔の公文書の作成に使った機械 式和文タイプライターは漢字・仮名の何千字もが並んだ文字盤から希望の文 字を選び出すものだった。とても手書きの速さで使えるものではない。日本 語を、機械式英語タイプライター式の100個くらいのキーによって入力する には組み合わせキー(ローマ字入力)やかな漢字変換を使うというとても混み 入った複雑で面倒な作業になる。かつて存在した仮名タイプは電報文とか宛 て名書きのような短いものにしか使われない。仮名文字の羅列はまことに読 みにくい。

日本語は膨大な数の文字を使うのに対して英語はアルファベット26文字で事 足りる。数字や記号を合わせても60個くらいである。日本語・英語どちらで も素早い手書き文字は筆記体、草行書体のような続け字になる。書き殴った 文字は「みみず文字」になり判読しにくい。英語は文字数は少ないが文字の 形が簡単で画数が少ない。そのため速書きすると速記文字のようになってし まう。書いた本人ですら読めなくなる。仮名文字をくずすと屈曲が少なくな り判別が難しい。漢字は元々画数が多く曲りが急角度なために、くずしても 識別のための特徴点が多く残る。

速記は衆参両議員とか裁判所で使われていたが手書き式によるものは廃止の 方向らしい。新たに速記文字を習得するのは困難である。それ以上に難しい のは速記文字で書き取ることより速記文字で書かれたものを通常文字に復元 することである。特徴の少ない文字を判読するのは困難だがそれとは別に専 門用語をその場限りで二文字程度に簡略化したりする。書き取った直後に復 元しておかないとパズル化してしまう。素早く書いた文字は読み取りに時間 がかかる。ゆっくり丁寧に書いた文字は速く読める。

英語圏では悪筆が多かったために機械式英文タイプライターが考案された。 文字数が少ないから機械的構造に無理がない。英語は手書きの速さでタイプ ライターを使うことができる。

日本人にとってパソコンはまことに取っ付きにくい機械である。それが誰に でも使えるようになったのはキーボードの補助装置として付属するマウスの おかげである。マウスを本格的に使うようになる以前のms-dosの時代から日 本語ワープロソフトはある。その頃は未だマウスは一般的ではなくて、キー ボードを文字入力と編集コマンド入力のどちらにも使わなければならなかっ た。

おそらくマウスのように微妙な空間的(平面的)位置を検出してその情報を使 うための能力がパソコンに不足していたのだろう。或ることが出来たとして もその処理に時間がかかる(反応が遅い)ようでは使えない。本来処理すべき ことがマウスの処理に忙殺されてしまいマウスが邪魔者になるようでは困 る。副業(マウス処理)が本業(編集処理)の足を引っ張ったのではワープロと して使えない。どんな素晴しいアイデアでもそれを無理なく実現する仕掛け (電気的・機械的・ソフトウェア的)がつくれなければ(この場合は機械の処 理速度が要求水準に届いてない、動作の速い機械が作られるまで新機軸はお 蔵入りになる)技術が進歩して水準に到達するまで待つしかない。

キーボードだけを入力装置として使うワープロソフトは熟練者でないと使い こなせない。文字下手でとても困っているというような機械操作を習得する 困難を忍ぶだけの理由がなければ新しい機械に手を出そうとはしない。マウ スを自由に当たり前のように使えるwindowsの時代になってようやくワープ ロソフトは誰でも手軽に使えるものとなったのである。

文字入力にはキーボードを使い、編集コマンドはマウスで指示するという使 い分けができるようになったことでワープロソフトを誰もが使うことができ るようになった。キーボードしか使えなかった頃は自分が押したキーが文字 入力になるのか編集コマンドの指示になるのかに始終気を付けてなければな らない。このことに神経を使いとても疲れる。

画面に予期しない文字が挿入されるなら大した問題ではない。もっともそれ にも気付かなかったら問題ではあるが。押したキーが編集コマンドと解釈さ れて画面が一変すると操作の間違えに気付き慌ててアンドゥ(元に戻す)す る。そうでなければ何が起きたのか何も起きてないのかその内容が分からな いという不気味さを抱える込む。そのときに見掛けは変わらなくても全体を 探すと隠れたところにとんでもないことが起きているかもしれない。

なにせキー配列さえうろ覚えなうえにコマンドのニーモニック文字(コマン ド内容を表す単語の頭文字)も憶えられない。若い人なら何とかなるだろう が初老ともなると絶望的である。その点でマウスは便利である。マウスでメ ニューバーをつつけばやりたいことズバリ表示の文字メニューが見つかる。 クリックすればより細かいメニューになる。文字入力が必要ならダイアログ ボックスにキーボードから入力すればよい。キーボードを文字入力専用の道 具に閉じ込めることができる。

私が1995年にパソコンを買って、練習したのがワープロソフトの一太郎と表 計算ソフトのロータス1-2-3であった。パソコン通信があるということは 知っていたがパソコン使用の主目的は一太郎であった。見栄えのよい催し物 案内文書を作りたいである。ソフトのインストール作業の面倒をなくして直 ぐに使えるプリインストールが売り物の機械を買った。マウスを使う時代に なっていたので文字入力はキーボードからとし、文字入力以外のその他の操 作はマウスでメニューバーをクリックする使い方である。

今にして思うとマニュアルを見なくても手探りで何とか扱えるものだったか もしれない。しかし、まったくのトライアルアンドエラー(行き当たりばっ たりの試行錯誤)では能率が悪すぎる。一つのやりたいことが出来るまでに 何十分もかかるようでは、やる気が殺がれる。よっぽど難しいことをやるの ではないかぎりサクサク思い通りに動いてくれないと投げ出したくなる。

一太郎をいじりながらロータスも触って次第にパソコン操作に慣れてくると 察しがつくようになる。たぶん、こうしたらよいのではないかと閃くように なる。それはwindowsのもとで動くアプリケーションソフトの一太郎とか ロータスのメニューバーの構造、メニューの並べ方をデザインガイドとして マイクロソフトが定めているからである。

たいていのwindowsソフトのメニューバーは左端から順番にファイル(F)、編 集(E)、表示(V)のようなメニューが並ぶようになっている。一太郎でもロー タスでもメニューの並び方が似ている。そのためどれか一つのソフトに慣れ ると別のソフトを使うときに、たぶんこのメニューはこのあたりだろうと予 想できるようになる。

windows 95が使われていた頃にはデザインガイドが分厚い本として売られて いたけれども現在はpdfファイルとして配布されているだけらしい。これが windowsの使い方を説明する文書のネタ本になる。

一太郎はwindows以前のdosな時代からある。ms-dosでもマウスは使えたよう だがキーボードだけで操作するのが主流だったらしい。そのため一太郎には 文字入力ではない編集操作にはエスケープメニューが用意されている。文字 入力ではない操作を開始するとき、最初にエスケープ(esc)キーを押す。esc キーを押しても編集画面に文字が入力されることはない。escは文字入力に は使われないキーである。ESCキーは「現在の操作を抜ける(脱出する)」 用途で使用される。一太郎でのescキーは、文字入力状態を抜けて編集メ ニューに入る合図として使う。

escキーを押すと編集画面の下のほう(使用者の目線のあたり)にメニューの 一覧表が表示される。その中から希望の項目を選ぶ。項目の前にアルファ ベットがあり、そのキーを押すとそのメニュー項目を選んだことになる。さ らに二階層目のメニュー表示になる場合もある。一太郎8のエスケープメ ニューの第一階層は次のようである。

A・入力T・ファイルP・印刷F・書式D・削除B・消去
M・移動C・コピーL・クリップY・ペーストX・枠W・画面
K・罫線E・飾りN・サイズR・フォントS・検索J・ジャンプ
U・特殊V・ツールZ・マクロH・補助O・オプションQ・終了

もしescキーを押したけれど文字入力に戻りたいならaキーを押す。

windowsで動く一太郎にはメニューバーがある。altキーを押すとメニュー バーの左端にあるファイル(F)の部分が膨らむか凹むとか着色されるかなど で選択予備状態になる。それをクリックすればメニューの第一階層を選択し たことになり第二階層のドロップダウンメニューが開く。隣りの編集(E)を 選びたいなら右矢印キーで選択場所を移動させるかeキーを押す。そうする とドロップダウンメニューが開き次の階層のメニューを選ぶことに移行す る。

一太郎のエスケープメニューとwindowsメニューは似ている。メニュー項目 の内容を予測できるような英単語の頭文字をニーモニック(mnemonic、記憶 の助けとなるもの)としている。違うのはエスケープメニューは一太郎特有 のものであるが、windowsメニューはワープロソフトに限らず他の表計算ソ フトやグラフィックソフトとかでもメニューの並び方が同じになるようにし ていることである。ジャストシステムの表計算ソフトである三四郎に一太郎 のようなエスケープメニューはない(だろう、たぶん)。

(注)初心者にはメニューバーをマウスで操作するほうが受け入れやすい。エ スケープメニューはキーボード操作になるので敷居が高い。一太郎では設定 によりエスケープメニューを使えないよう(メニュー一覧表が表示されない) にできるらしい。素早い操作にはマウスを使うよりキーボードでポンポンと 打つほうが速い。キーの位置はブラインドタッチできてもメニューバーはそ の度にマウスポインタで指し示す必要がある。凸凹なキー位置を指先が憶え ている。キーボードのFとJのキートップには左右の人差し指のホームポジ ションを知らせる突起がある。真っ平らな平面上には手掛かりがない。視覚 でしか識別できない。

昔の一太郎には分厚いマニュアルが付属していた。ソフト自体はcdに収録さ れていてかさばるものではない。マニュアルは詳しいものとは別に簡易なも のも付いていた。とりあえずは付属のマニュアルを頼りに操作法を習得す る。エスケープメニューについてはそういう方法もあるとしてwindows標準 のメニューを使う説明であった。

(注)最近は多くの人がパソコンを使う時代になり、身近な人に使い方を尋ね ることができるようになった。また色々なソフトを使っているうちに察しが つくようになってもいる。そのため分厚い電話帳のようなマニュアルは付属 しなくなった。メニューが読めて、そのおおよその意味が分かる子供達はマ ウスをシャカシャカやっているうちになんとなく使いこなしてしまうもので ある。

実行したい編集コマンドに結び付けられたキーがうろ覚えな上にそのキーを 不規則なキー並びの中から見つけ出さなければならない。それよりはマウス でメニューバーをつつくほうが速い。メニューの項目名を憶えてなくてもメ ニューを一覧させてその中から選べる。

私は、その昔(1995年ごろ)に一太郎の取り扱いを練習したけれどエスケープ メニューを使った憶えがない。普段は使わない一太郎を未だにパソコンにイ ンストールしたままなのでエスケープメニューの使い勝手を試してみた。

文字入力しているとき、escキーを押すと第一階層のメニュー(上記のもの) が編集画面下部に表示される。メニュー項目の先頭にあるアルファベット キー(大文字で表示してあるがシフトキーと同時押しせずに小文字でよい)を 押すと編集コマンド実行になるか、または第二階層のメニュー表示になる。 こうして木構造のメニューツリーを根元から枝分かれした末端の枝先(の 葉っぱ)でコマンドの実行になる。

windows標準のメニューでは、メニューの第一階層が編集画面の上にメ ニューバーとして常に表示される。左端から「ファイル(F)」、「編集 (E)」、「表示(V)」……のようである。メニューをキーボードから操作する には先ずaltキーを押す。altキーを押すと左端の「ファイル (F)」の部分が浮き上がるとか凹むまたは着色するなどして選択予備状態に なる。enterキーを押すと「ファイル(F)」の下に第二階層のメニューになる ドロップダウンメニューが開く。第一階層(メニューバー)の他のメニューを 選びたいならそのメニューに結び付けられたアルファベット(メニュー項目 の後ろの括弧内にある英文字)キーを押す。あるいは矢印キーで選択予備状 態を左右に動かして希望のところでenterキーを押す。

windowsソフトのメニューバーをマウスで触るには単にマウスポインタをメ ニューバーの項目名に持ってゆくだけでよい。ポインタの下になるメニュー 項目が浮き上がるとか凹むとか着色状態になって選択予備になる。そのまま マウスポインタを隣りのメニューに移動させるとそちらが選択予備になる。 クリックすれば第二階層となるドロップダウンメニューが開く。ドロップダ ウンメニューが開いた状態でマウスポインタをメニューバーの横方向に移動 させるとそれぞれのメニュー項目をクリックすることなく第二階層のドロッ プダウンメニューが次々に開いてゆく。マウスポインタを隣りに動かす度に ドロップダウンメニューがパタパタという感じに切り替わってゆく。マウス を左右に動かすだけで第二階層のメニューを横断的に一覧できる。

さらにドロップダウンメニューの項目を上から下にマウスポインタを動かし てゆく。もし、第三階層のメニューがあったらその項目の横にサブメニュー のドロップダウンメニューが開く。どれかの第一階層(メニューバー)の項目 を一度だけクリックしたならマウスポインタをドロップダウンメニューの中 を移動させるだけで全てのメニューの項目を渡り歩ける。その中に自分の希 望の操作が見つかるだろう。windows標準のメニューをキーボードから操作 するよりはマウスを使うほうがやさしいし、速い。

マウスでメニューをさわるのとキーボードからメニューを使うのとを比べる とマウス操作のほうが気楽である。マウスを動かしているぶんにはボタンを クリックしないかぎり編集画面を変更することはない。キーボードからのメ ニューを使う際は、編集画面に不要な文字を打ち込むことになるのではない かと恐れる。そのため文字を打ち込むときだけにキーボードを使い、編集コ マンドはマウスで選ぶという習慣が自然と身につく。というか最初はメニュ ーバーをキーボードで操作できることを教えられない、知らない。メニュー バーはマウスで使うものと思い込まされる。教える側にとってもマウスのほ うが説明しやすい。

木構造のメニューツリーを渡り歩くに、windows標準のメニューをマウスで 探るのであれば根元から末端の葉っぱ(最終項目)に辿り着くには枝を何度も 進んだり戻ったりできる。これに対して一太郎のエスケープメニューや windows標準のメニューバーをキーボードから操作する場合はメニューツ リーの根元から葉先への一方通行でしか進めない制約がある。例えば「C・ コピー」ファイル」メニューを選ぶと第二階層である次のメニューが開く。

C・文字L・行S・段落P・ページB・ブロック

この段階でコピーを取り止めて第一階層に戻りたいならescキーを押してエ スケープメニュー自体をいったんキャンセルする。そしてもう一度escキー により第一階層のエスケープメニューを表示させるという初めからのやりな おしになる。マウスでwindows標準のドロップダウンメニューを進んだり 戻ったりと渡り歩く便利がエスケープメニューやキーボードからのメニュー バーにはない。

一太郎のエスケープメニューのよいところは、windows標準メニューのスタ イルを押し付けられていないことだろう。無理矢理に天下り式なメニューの 鋳型にはめ込むことをしない。手順を鋳型に合わせてねじ曲げない。自然な 流れに逆らう手順にならない。そのソフト特有の編集コマンドを無理のない メニューツリーにすることができる。

escキーで編集コマンドを呼び出す方法は、私が常用するテキストエディタ vi(詳しくはvim)に似ている。escキーにより編集コマンド(エスケープメ ニュー)に移行するのは、viでコマンドモードに入るためにescキーを押すこ とを真似たのではなかろうか。さらにescキーはキーボードの左上の遠いと ころにあり不便なのでwindows標準のメニューではaltキーを使うことにした のだろう。

テキストエディタviは、マウスは既に発明されていたけれど実用化されてな いころに開発されている。操作はすべてキーボードからする設計になってい る(現在のviではマウスを使うこともできる)。viの一番変わっているのは escキーを押すと編集コマンドを受け付ける専用のモードに入ることであ る。コマンドモードでキーボードを叩いても編集画面への文字入力にならな い。文字入力するにはコマンドモードで「a」や「i」などのキーを押してイ ンサートモードに移行しなければならない。このことは一太郎のエスケープ メニューで編集コマンドを実行しようとescキーを押したけれどその必要が なくなって文字入力に戻りたい場合に「A・入力」を押すことに似ている。

一太郎のエスケープメニューでは編集コマンドの実行が終わると自動的に文 字入力待ち受け状態に戻る。しかしテキストエディタのvi(またはvim)では 編集コマンドの実行後に自動的に文字入力モード(インサートモード)には戻 らない。「a」や「i」などのキーを押して明示的にモードを切り換えなけれ ばならない。

viのようにキーボードからのキー入力を編集コマンドと見なすコマンド専用 のモード及び編集画面への文字入力と解釈する専用のモードの二つのモード を持つエディタをモーダルエディタ(modal editor)という。それ以外(たぶ んvi以外)のコマンド専用なモードを持たないエディタがモードレスエディ タ(modeless editor)である。

escキーを押すと編集コマンドを受け付けるようになるという点では、一太 郎とテキストエディタviは同じ反応をする。これらのソフトでのescキーを 押した後の挙動には二つの違いがある。一つは、escキーを押すと一太郎で はエスケープメニューの一覧表が編集画面の下に表示される。それに対して テキストエディタviは編集コマンドの一覧表を出さない。したがって、viを 使うには、編集コマンドに結び付けられた文字キーをニーモニック (mnemonic、コマンド名を暗示する英単語の頭文字が記憶を助ける)として暗 記してなければ使うことができない。コマンド一覧表が表示されるエスケー プメニューのほうが取っ付きやすい。もしwindows標準のメニューバーを使 うのであれば第一階層のメニューが常時表示されている。マウスを使えば第 二階層のメニューまで一覧することができる。メニューの一覧の便利からい えばエスケープメニューよりwindowsのメニューが優れている。

もう一つの違いは編集コマンドを実行したあとの挙動にある。一太郎のエス ケープメニューでは自動的に編集画面への文字入力待ち受け状態に戻る。テ キストエディタviでは編集コマンドの実行が終っても押された文字キーを編 集コマンドと解釈するコマンドモードのままになる。エスケープメニューで はescキーを押してメニューの何階層かを経てコマンドを実行完了するまで は一時的に編集コマンド専用モードになるけれど、コマンドの実行後は文字 入力待ち受けに戻る。

テキストエディタviのコマンドモードにおいて明示的に「a」や「i」キーを 押さないかぎりコマンドモードからインサートモードにならないのは何故で あろうか。一太郎のように自動的にインサートモードになってくれたほうが 便利な気がする。この理由はviがマウス操作を想定してないこと、さらには カーソルを移動する矢印キーさえも使わない(というか、viが開発された頃 には矢印キーがなかったのであろう)という事情がある。

例えばカーソルを移動するにもコマンドモードに居る必要がある。右手の ホームポジションであるh, j, k, lにそれぞれ左、下、上、右方向へのカー ソル移動がバインドされている。hを一回押したらカーソルが左に一文字分 だけ動いて自動的にインサートモードに復帰するのでは連続移動ができない (一太郎のカーソル移動は矢印キーに頼るので編集コマンドに含まれない)。

(注)viのインサートモードに居るときにカーソルを動かしたくなったら矢印 キーを使っている。少しのカーソル移動に、わざわざコマンドモードにする のは面倒である。そのあたりは臨機応変にやっている。

viにおけるキーワード検索にはコマンドモードにおいて「/」を打つ。そう すると編集画面の最下行のミニバッファと呼ばれる一行分の入力スペースの 行頭にスラッシュ(/)が表示される。カーソルがスラッシュの直後になり キーワードの入力待ち受けになる。キーワードを入力したらenterキーを押 す。そうすると本文上の現在カーソルより後ろでヒットしたところにカーソ ルが移動する。ヒットした位置よりさらに後ろのヒット箇所にカーソルを飛 ばしたいなら「n」キーを押す。これを繰り返すことでヒット箇所を巡るこ とができる。前方向にヒットを巡るなら「shift+n」(大文字のNになる)を使 う。コマンド「n」を使う度に自動的にインサートモードに戻ったのでは ヒット箇所を巡ることができない。

一太郎はカーソル移動を編集コマンドには入れてない。検索はエスケープメ ニューにあるがダイアログボックスが表示される。編集コマンド実行後に自 動的に文字入力に復帰すると便利な場合もあるが却ってそのことが不便なこ ともある。viはインサートモードに自動復帰しないことによりワンキーコマ ンドだけでなく式とか文字列などをコマンドに含めることができる。

毎日vimでものを書くようになってから二年以上経っているけれども未だに コマンドモードに居るのに編集画面に文字入力しようと思ってキーを叩いた 途端に画面が突然と前後に動いたりしてびっくりすることがある。逆にイン サートモードに居ることを忘れて編集コマンドのつもりで不要な文字を入れ たりの失敗もする。他人が見たら、何でそんな厄介なもの使っているのだろ うと思うだろう。一種の中毒かもしれない。道具というものは使い慣れる と、不便に見えるものも快適になる。慣らされてしまう。そして慣れれば慣 れるほどに他の道具が使えなくなる。いつもの道具なら簡単にできるのに、 この道具はどう使えばよいのだといらいらする。

モーダル(modal、様式・形式(mode)のある)なエディタは、たぶんviだけだ ろう。他のエディタはすべてmodelessである。そのためmodal editorはとて も通りの悪い用語である。viを初めて使うとき誰しも使いにくいと感じるも のらしい。私も日常的にvimを使っているにもかかわらず二つのモードを取 り違える失敗はしょっちゅうである。

英語圏でviは結構使われているらしい。その理由を挙げると、英語はキー ボード上にある26文字のアルファベットで事足りること、そして機械式英文 タイプライターを使い慣れた人達にとってviのインサートモードはタイプラ イターを使うのと同じ使い勝手のものであるということである。

日本語はアルファベットキーをそのまま使ってローマ字として入力するかア ルファベットキーなどに配置された仮名キーで先ずは日本語文の読みを入力 する。その後に適切に漢字化するべく仮名漢字変換を使うという手間がい る。フランス語とかドイツ語ではアルファベットの上に帽子のような記号を 被せたり尻尾のような記号をぶら下げたりする。そのような文字に対応した キーを完全装備していない。付属物をアルファベットに付けるための操作が 必要になったりする。事実上アルファッベット26文字では不足する。日本語 の仮名50音くらいの数に収まるだろうがアルファベットの個数だけは足らず 数字や記号キーに割り付けなければならない。そうなるとソフトウェア的に 英語キーボードから使えるように工夫をこらす必要がある。なにしろタイプ ライターが、そしてコンピュータが英語国で開発されたものを土台にしてい る以上いたしかたないことである。

そしてなんといっても機械式タイプライターは真剣勝負なのである。打ち間 違うことなく使うことが日常的に求められる。もし間違えたら修整に手間が かかる。正式な文書なら初めからやりなおしになる(このことは和文タイプ ライターでも同じである)。タイプミスは許されないという重圧の下で機械 式英文タイプライターを使うのはviのインサートモードだけを使うのと同じ である。コマンドモードなしのviはタイプライターと同じものである。英語 圏の人はviをタイプライター感覚で使いこなしている。打ち損じがあったと してもviのコマンドモードに入ってしまえば、それは修整専用モードである というviの分かりやすさがよいのだろう。タイプミスしないならコマンド モードは(ほとんど)必要ない。

一太郎のエスケープメニューについて考えるに関係のないテキストエディタ のviの話しになっている。エスケープメニューの便利さや不便はエスケープ メニューを日常的に使っている人は案外に気付かないのではなかろうか。便 利あるいは不便と感じるにはそのベースとなる判断基準がいる。何かと比べ ることで便利や不便を感じる。そのためには似通った別のものの使い心地を 試して比べてみることが必要になる。

一太郎には、開発者の親心とでもいえるような、繊細な心遣いが随所にあ る。それが、やさしい操作性として、ユーザーに認識されている。たとえ ば、入力した文字を漢字に変換するキーをスペースキーに割り当てている。 キーボードには変換キーがあるにも関わらず、プログラムでスペースキーを 使えるようにしてある。これは英文を打つとき、単語間にスペースを入れる のと、日本語入力時の文節ごとの変換を同じように扱うのが、最も自然で日 本人の感覚に近いと考えたからである。指の配置から考えても、最も多用す る変換機能をスペースキーに割り当てるのは理にかなっている。「やさし い」だけでなく、機能的なのである。
一太郎にはコマンド入力時に、なるべく機能キー(キーボード上段のキー) は使わないという方針があった。これは、「タイプ入力のベテランは、遠く にある機能キーを1タッチする間に、近くのキーは4タッチできる」という分 析からだ。エスケープキーを押すとコマンドメニューが出るスタイルは、こ うした発想から確立された。メニューが画面の下に表示されるのは、文書作 成時、ほとんど画面の最下部を見ているユーザーに視線を移動させないメ リットがあった。機能キーを多用しないスタイルは、将来パソコンとキー ボードが小型化した場合にも対応しやすい。一太郎は当初から、ハードウェ アに依存せず、細かい操作性にまで気を配っていた。
文章を書くとき、文書名を決めることなく、即座に書き始められ、文書を保 存するときに文書名を決める手順になっている。これも一太郎が最初に導入 した方法である。他のワープロソフトではそうはいかなかった。文章を書く 前に、まず文書名を決めて、それから書く必要があった。そうした方が、プ ログラム的にはやさしいのだが、一般のユーザーにとっては、書きたいとき にパッと書ける方が自然である。
(1)MS-DOSの時代から操作体系が一貫しているのが、すごい。
(2)マウスを使わずに操作できて便利!
(3)文書作成の本質は文字入力です。文字を入力するデバイスであるところの キーボードから手を離さずに操作を完結させることの出来るエスケープメ ニューは、一太郎のすばらしい機能だと思っています。
(4)なんと言ってもEscキーだ。左上のEscキ-をさわると画面下部に操作一 覧が並ぶ。下部に並ぶので視線を上にあげなくていい。視線はそのままで、 例えば移動ならMを、書式ならFを押せばいい。視線をあちこちに動かさずに すむ点がすばらしい。Escは是非残しておいて欲しい。
(5)昔からエスケープメニューを使っているので、これがなければ一太郎で はない。キーボードだけで仕事が進められる点が、他のソフトと大きく異な る点である。エスケープ・P・Pというメニューが頭に入ってしまっている ので、とにかく動きやすい。
(6)思考の中断なく、キーボードのみで文章が作成できます。Escキーとあと2 つのキーをタイプするだけでほとんど作業できます。モバイルで作成すると きなど、絶対的に便利です。DOS(N-Bascic)の時代から継承していることも 好感が持てます。
(7)これ最高!日本人ならコマンドをアイコンで探すより漢字を視覚で探した 方が早い。また、三太郎時代からコマンドの位置や略号も変わらないのは数 百年間の伝統を守る和菓子屋を想起させる。開発担当者の先見の明を感じ る。他のアプリでも印刷するとき、つい[Esc]→[P]→[P]としてしまう。
(8)左手の小指が覚えています。これからも、無くさないでください。
(9)これこそ完璧なショートカット。

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