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2011年12月

2011年12月29日 (木)

不快指数(discomfort index)のルーツにせまる

不快指数(discomfort index)のルーツにせまる

Time-stamp: "Thu Jul 07 11:03:45 JST 2011"

discomfortはイメージが悪いということからアメリカでは temperature-humidity indexと呼ぶらしい。英語情報の検索ではこちらを キーワードにしたほうがよい。

アメダスから得られる気温と相対湿度データにより絶対湿度、外気エンタル ピーを2時間毎に計算している。それを始めたのは冬の寒さに湿度がどれほ ど影響するかを見るためであった。絶対湿度の次に着目したのは外気が持つ エネルギーを表す外気エンタルピーである。外気のエンタルピー(エネル ギー)を人間が感じ取るだろう。外気のエネルギーが少なければ人間の体内 から熱エネルギーが出てゆきやすい。

6月の終わりになって外気エンタルピーが前日と同じであるのに翌日は涼し く前日は暑くてたまらないパターンを経験する。外気エンタルピーだけでは 説明できない。そこで不快指数を計算してみる。そうすると翌日の不快指数 が前日より3だけ小さい。これは暑さの指標になる。もともとその向きに考 えられたのが不快指数なのだから当たり前なのであるが、その的確さを痛感 したわけである。

平成23年6月30日の岡山市における20時の温度、相対湿度、外気エンタル ピーはそれぞれ29.2℃、61%、69.1kJ/kgであった。翌日の7月1日の20時の温 度、相対湿度、外気エンタルピーはそれぞれ25.1℃、87%、69.8kJ/kgであ る。昨日(6月30日)20時の体感はモーレツに暑く、翌日の20時は涼しいと 感じた。外気が持っているエネルギーである外気エンタルピーがほぼ同じで あっても気温の低いほうが楽に感じる。外気エンタルピーが大きいほど暑く 感じると思ったがそうでもない場合があるらしい。不快指数で比較してみる と凡そ3だけ翌日のほうが低かった。

6月30日0.81*29.2+0.01*61*(0.99*29.2-14.3)+46.3=78.9(やや暑い)
7月1日 0.81*25.1+0.01*87*(0.99*25.1-14.3)+46.3=75.8(暑くない)

不快指数には何種類かの計算方法がある。上記は日本国内で多く使われる計 算法によっている。この式は一見してハッハーンと分かる平明なものではな い。これより簡単な次の計算式がネット検索で見つかる(温度はセルシウス 温度(摂氏温度)を使う)。6月30日の湿球温度は23.3℃であり、7月1日のそれ は23.4℃であるため不快指数はそれぞれ78と76になる(湿球温度は気温と相 対湿度からの逆算による)。

(注)今回のやりきれない蒸し暑さと翌日の涼しさにおける不快指数の違いは 2~3の僅かなものだった。感じ方のレンジが5刻みであることからみると2~ 3の差はけっこう大きいと言えるようである。
不快指数     体感
~55          寒い
55~60        肌寒い
60~65        何も感じない
65~70        快い
70~75        暑くない
75~80        やや暑い
80~85        暑くて汗が出る
85~          暑くてたまらない
(注)不快指数には風とか直射日光(照り返しを含む)の影響をまったく入れて ない。また、前日の蒸し暑さに慣らされ、翌日の温度が下がった落差でより 涼しく感じたかもしれない。それでも不快指数が下がったことは確かであ る。そこで不快指数とは何であるかを調べる。最初の検証で使った相対湿度 の入った不快指数の式は複雑にすぎる。

ルーツらしき不快指数の計算式
不快指数=0.72×(気温十湿球温度)+40.6

不快指数が100になるのは(気温+湿球温度)が82.5℃のときになる。相対湿度 が100%なら気温と湿球温度は同じになる。湿度100%なら空気中の水蒸気は飽 和しているので蒸発熱により湿球温度が気温より下がることはない。このと きの気温と湿球温度はどちらも41.25度になる。これが体温なら致命的に高 い。気温が体温を上回れば100%不快は間違いない。ところで上式に現われる 0.72と40.6の半端な数字はどこから来るのだろうか。

この式自体はアメリカ製である。彼の地では一般にファーレンハイト温度 (華氏温度)を使っている。摂氏温度Cと華氏温度FはC=5/9(F-32)及び F=(9/5)C+32で換算する。上式を華氏温度で書き直すと式に現われる定数が 切りのいい数字になる。

不快指数=0.72×(気温十湿球温度)+40.6(セルシウス温度版)
=0.4×(気温十湿球温度)+15(ファーレンハイト温度版)

ファーレンハイト温度とセルシウス温度は次の関係にある。摂氏温度は 0℃(氷の融点)→100℃(水の沸点点)を100等分する。華氏温度は32°F(氷の 融点)→212°F(水の沸点)を180等分する。なので摂氏:華氏=100:180=5:9 になる。摂氏の5℃分が華氏の9°Fに相当する。これが換算式のからくりで ある。

摂氏温度は氷の融点と水の沸点を基準にしている。華氏温度は人間が暮す環 境の温度をもとに定めている。ファーレンハイトは最初、彼が測ることので きた最も低い室外の温度を0度、彼自身の体温を100度としようとしたと述べ ている。華氏0°Fは摂氏-17.777…℃であり、華氏100°Fは摂氏37.777…℃ になる。彼の身の回りの気温はこの範囲であるとした。人間感覚を基準にす ると、氷の融点は華氏32°Fになり水の沸点は212°Fとなったのである。

気温が華氏100°F(ほぼ体温)で湿度100%なら湿球温度も華氏100°Fになるか ら不快指数は0.4*(100+100)+15=95になる。単純な気温と湿球温度の平均 0.5*(100+100)=100より控え目にしているところに含蓄がある。セルシウス 温度を使う式で不快指数を95にすると(気温+湿球温度)は75.555…℃にな る。その半分は37.777…℃(ほぼ体温)である。

この形式の不快指数はとても分かりやすい。湿球温度は気温を超えることは ない。湿度が高いほどに湿球温度は気温に近い。つまり気温が高いほど、ま た湿度が高いほどに不快指数は高くなると平明そのものである。たぶん、こ れが不快指数のルーツだろう。THI(temperature-humidity index)と名付け られた類似版は(気温+湿球温度)によるルーツ版に近い値になるようにつく られている筈である。これこそTHIの元祖に違いない。

気温と湿球温度の差は最大で10℃くらいのようである。二本の温度計の間に 湿度換算表が挟まっている見慣れた乾湿計の表の温度差は1~6℃くらいであ る。乾湿計付属の換算表に頼らなくても詳しい換算表(温度差10℃くらいま で)がある。摂氏温度なら(気温+湿球温度)にかける乗数0.72と上げ底の 40.6を憶えておけば不快指数が簡単に計算できる。

(注)手近にある乾湿計付属の相対湿度換算表における乾湿差は1~6℃までとなっ ている。使った経験では乾湿差が1~3℃は夏用で、4~6℃は冬用と感じる。

手元に乾湿計があれば湿球温度は知れる。アメダスのデータを使うなら湿球 温度は提供されないから相対湿度を使うしかない。相対湿度と気温から不快 指数を求めるには次を使う。ただし、次式を電卓でやろうとすると面倒であ る。先ず湿度計算ツール(後述参照)に気温と相対湿度を入力して湿球温度を 求める。そしてルーツ版の不快指数式(乾湿球示度の和に0.72を掛けて40.6 を加える)を使うとよい。

不快指数(DI) = 0.81T + 0.01RH(0.99T - 14.3) + 46.3
T :気温(℃)
RH :相対湿度(%)

これはファーレンハイト温度で表された不快指数における気温を F=(9/5)C+32により摂氏温度に直したものになっている。なお、気温と湿球 温度による不快指数のルーツバージョンと気温及び相対湿度によるバージョ ンはまったく同じものではない。ルーツバージョンに似せて作られた代替版 (新規版)である。ファーレンハイト温度版は次になる。

DI=T+0.55(1-RH)(T-58) (RHには小数値を使う、パーセント値ではない)

とりあえず気温が高ければ不快指数が大きくなることは分かる。しかし、相 対湿度の影響は見積りにくい。気温が華氏58°F(摂氏14.444…℃)を境にし て第二項の正負が逆転する。(気温+湿球温度)の4割に15を加える簡明には 大きく負けておりややこしい。不快指数の二つのバージョンがどれくらい違 うかは次のページに解説されている。

不快指数の計算式は
式A:不快指数=0.81×気温+0.01×湿度×(0.99×気温-14.3)+46.3
という風に書きましたが、もう一つの計算方法として
式B:不快指数=(乾球温度+湿球温度)×0.72+40.6
というのがあります(”蝶さん”より)。
そもそも、湿度というものは、乾球・湿球温度計の値から表を使って簡単に 見ることができます(表はこちら)。例えば、乾球温度(乾球温度は気温の こと)が25℃、湿球温度が23度だったら、温度差は2℃ですから、湿度 は84%ということになります。また、乾球と湿球の温度差がない場合、湿 度は100%になります。そこで、湿度に100を入れてみたとき、2つの 式AとBが同じになるかどうかを考えると・・・だいぶ違いますね。
さて人間の体温(37℃)を華氏で表わすと98.5°Fとなり(歴史的には96°F =12×8)ほぼ100°Fと考えてよい。乾湿球温度が共に100°F(すなわちE.T  100°F)を指すような環境にあっては,冷壁や特殊な状態を考えぬ限り, 体よりの放熱は行われなくなり普通の意味ではこれ以上苛酷な条件の下で生 活することは考えられない。この点の暑さの程度をもつて満点と定め,不快 措数100とする。すなわち不快さが100点満点である。
Table.1をみればD.Iが85~100ではほとんど全員が不快さを訴え,不快さで は優の部類に入る。D.Iが70以下では不快を覚える者はなくなり,つまり不 快さでは落第点ということになる。暑さのこのような表わし方は日常の経験 からいっても直感的な判断の基準を与えおもしろみがある。
不快指数が温熱指標としてどの程度の正当性を有するかを,いままでに発表 された有効温度および平均皮膚温法と比較して検討を試みた。その結果不快 指数は直感に訴えて理解し易い,容易に求め得るなどという利点を有してい るものの,人体からの放熱に大きな影響を与える気流やふく射については何 んら考慮を払っておらずその構成の単純さからいってむしろ時代に逆行する かの感さえ与える。このように不快指数は温熱指標としては,正確さの点で かなり不完全なものであるということが解った。
なお米国においてdiscomfort indexなる名称は観光地などで営業上障りがあ るということでtemperature-humidity indexという味気ない名称に変更され たとのことである。

(注)蒸し暑さの程度を表す不快指数は、この種の指数のうちでは骨董品級の ものである。しかし、その分かり易さと手軽に計算できることではダントツ である。不快指数が80(かなりシビア)を超えたら冷房相当と決めたりの便利 がある。冷房の推奨設定な28℃、60%の不快指数77は蒸し暑い。26℃、60%な ら74の辛うじての快適になる。

temperature-humidity index (THI), combination of temperature and humidity that is a measure of the degree of discomfort experienced by an individual in warm weather; it was originally called the discomfort index. The index is essentially an effective temperature based on air temperature and humidity; it equals 15 plus 0.4 times the sum of simultaneous readings of the dry- and wet-bulb temperatures. Thus, if the dry-bulb temperature is 90°F(32°C) and the wet-bulb temperature is 50°F(10°C), the discomfort index is 15 + 0.4 (140), or 71. Most people are quite comfortable when the index is below 70 and very uncomfortable when the index is above 80 to 85. In the U.S. the highest average daily values of the THI, exceeding 80, consistently occur in the southern California deserts and southwestern Arizona in July and August. Compare windchill.

(注)例題として挙げられている数値が不適切な(有り得ない)ものになってい る(乾球32℃で湿球12℃のとき相対湿度2%になる)。乾球28℃、湿球20℃とす ると相対湿度は48%になる。28℃、20℃はそれぞれ82°F、68°Fである。
THI=15+0.4*(82+68)=75(ルーツバージョン)
THI=0.81*28+0.01*48*(0.99*28-14.3)+46.3=75.4(相対湿度バージョン)

temperature-humidity index-(Abbreviated THI; also known as discomfort index, effective temperature.) An index to determine the effect of summer conditions on human comfort, combining temperature and humidity. Several equations have been used to calculate the index, dependent on the data availability:
THI=0.4*(Td+Tw)+15
THI=0.55*Td+0.2*Tdp+17.5
THI=Td-(0.55-0.55RH)(Td-58)
where Td is the dry-bulb temperature in °F, Tw is the wet-bulb temperature in °F, Tdp is the dewpoint temperature in °F, and RH is the relative humidity in percent. In the equation, RH is used as a decimal; in other words, 50% relative humidity is indicated as 0.50.
Studies have shown that relatively few people in the summer will be uncomfortable from heat and humidity while THI is 70 or below; about half will be uncomfortable when THI reaches 75; and almost everyone will be uncomfortable when THI reaches 79. There are portions of the United States in which the THI has reached values around 90.

(注)上記三番めの式を摂氏温度で書き直すと日本国内サイトにある次の式に なる。
不快指数(DI) = 0.81T + 0.01RH(0.99T - 14.3) + 46.3
T :気温(℃)
RH :相対湿度(%)

不快指数が腑に落ちても自分でそれを算出できなければ実感が湧かない。か と言って手計算は面倒である。このための湿度計算ツールとしては次があ る。気温と相対湿度から湿球温度を求めたり、逆に気温と湿球温度から相対 湿度を求めることもできる。なお、気温と相対湿度から不快指数を求める webツールはいくつもある。そのページにアクセスして二つの数値を入力す ると不快指数が表示される。

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