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2011年6月

2011年6月28日 (火)

ミスナール(missenard)とリンケ(linke)の体感温度は怪しい

ミスナール(missenard)とリンケ(linke)の体感温度は怪しい

Time-stamp: "Thu Feb 10 18:10:00 JST 2011"

温度が25℃を超える環境では湿度の高いほうがより暑く(蒸し暑く)感じる。 風に吹けば少し楽になるが湿度を下げたほうが気持ちよい。つまり温度が高 いときの蒸し暑さは湿度の高さだけによるとみてよい。温度が10℃にとどか ない寒いときの風は猛烈に寒く感じる。温度が低いところでは湿度より風の 影響が大きい。

ネット検索すると気温と湿度がともに高いと体感温度が高くなることを表す ミスナールの式がみつかる。そして気温が低いときの風で体感温度が低くな るというリンケの式の紹介が続いている。不思議なことにおそらく発案者の 外国人であろうカタカナ名前にアルファベット表記が添えられてない。

出処が外国であるならば英語圏の記事にもミスナールやリンケの式が紹介さ れている筈と考える。グーグル検索で英語で書かれたページを見つけるには ミスナールやリンケのアルファベット表記をキーワードにしなけばならな い。カタカナのままでは日本語記事しかヒットしない。

ミスナールとは何処の国の人なのだろう。響きからはフランス人っぽい。ア ルファベット表記が見つからない。日本語記事はコピペばっかりで第一次情 報がない。偶然に見つけたmissenardの人名表記から次のpdfを発見する。

「missenard は、有効温度を数式に表現するにあたり三段階に分けて展開を 行っている。まず、静穏な気流の場合、気温が不変である場合、湿度が変化 すれば、人体の放熱の変化量は、着衣の熱伝導率の変化による顕熱および水 分蒸発量の両者が変化する。この変化量が1-e(eは湿度[-])に比例すること により、通常尺度の有効温度計算式を導いた。
Te=Ts-0.4(Ts-10)(1-e), Te: 有効温度[℃] Ts: 乾球温度[℃] 」
(注)ここに言う通常尺度とは10℃から30℃の範囲のことらしい。10℃以下は この計算式の想定外になるようである。

次の記事にミスナールの式がある。

``The most frequentry applied index is probably the Effective Temperature (ET) defined as the temperature of still air that gives the same thermal sensation conditions. The ET equation proposed by Missenard (1937) is:
ET = Ta - 0.4(Ta - 10)(1 - f)
where Ta is air temperature in ℃ and f is the relative humidity in decimals.''
``The effextive temperature (ET) has the same meaning of DI and it is a direct function of the air temperature and the relative humidity (Missensard, 1933 cited by Gregoruczuck and Cena, 1967):
ET = T - 0.4(T - 10)(1 - RH/100)''
(注)現物ではTと0.4の間のマイナス記号が抜け落ちている。
``MISSENARD Index (Krawczyk,1975), are the comfort limits between 18- 22°TE, calculated according to the formulas:
TEE = ts - 0.4(ts - 10)(1 - f/100), for wind speed ≦ 1m/s''
(注)Equivalent effective temperature が TEE らしい。

ある本の紹介に次の記述がある。

``World charts of the distribution of the mean effective temperature index (ET) for January and July are presented. The ET-index values have been computed using Missenard's formula ET = T-0.4(T-10) (1-RH/100).''

日本語の記事がないものかと検索していると次がみつかる。missenardの名 前が挙げられているだけで詳しいことは分からない。なお、このpdfは acrobat6.0で「暗号化辞書が正しくありません」のメッセージで表示できな い。グーグルドキュメントにアップロードすると読める。

「有効温度を別の方法で修正したのがフランスのMissenardである。 Missenardは1931年から有効温度の人体と環境との熱平衡に注目し、数式表 現を試みている。さらに、室温と周壁温度が等しくない環境への拡張も行 い、最終的には、1933年に水分蒸発による放熱量に対する熱平衡式を修正し て、新しい有効温度としての合成温度Temperature Resultantを導出してい る。」

日本語サイトでのミスナールの式は次のように示されている。英語サイトに あるのはET = T - 0.4(T - 10)(1 - RH/100)であり食い違う。たぶんこちら がオリジナルで日本向けにアレンジしたものが次になるのではと思う。どこ で0.4が1/2.3に、そして100%が80%にすり替えられたのかが分かない。

体感温度=t-1/2.3×(t-10)×(0.8-h/100)
t=気温℃
h=相対湿度%

ミスナール(missenard)の式に(t-10)が含まれていることから気温が10℃を 下回ると湿度の高いほうが体感温度が低いとする記事が多く見受けられる。 そんな感じがしないでもないが、もともとミスナールの式は10℃から30℃ま での気温で使うものとしてつくられたものらしい。英語圏におけるミスナー ルの式は歴史的遺産というか化石級の扱いである。簡単に計算できることか ら日本では引用されることが多い。

ミスナールの式を英語圏の記事で見つけることはできた。しかしリンケの式 はまったくみつからない。「リンケの体感温度」にいうリンケとは何国人か が分からない。たぶんスペルはlinkeもしくはlinckeでドイツ系かなという 気がする。ネット上にはまったく情報がない。ひょっとしたら都市伝説 (urban legend)級なものかもしれない。linkeやlinckeで英語サイトを検索し ても日本語サイトにあるようなリンケの式は見つからない。「リンケの体感 温度」とは日本でしか扱われない地域限定の計算式(実験式)なのだろう。

ネット検索で次の記事をみつける。「体感温度」というキーワードが現われ る。

「第27回特別講演(昭和37年) 体感温度に関する研究 神山恵三」

神山恵三氏は、気象庁気象研究所室長、東京農工大学教授を歴任した医学博 士で、緑の文明学会監事、日本生物環境調節学会などの評議員を務められた お方という。次の記事に「Linke」なるアルファベット表記がある。

「つぎに気候緩和効果の指標化については,従来から農業気象分野で使われ ているボーエン比などの気候指数や生気象学分野で使われている不快指数な どの体感温度の活用が考えられる(神山(18),内嶋(40)).体感温度は 複数の気象要素を組み合わせて一つの尺度とする場合が多く,乾・湿球温度 から計算される不快指数は最も単純な尺度である.これに対してLinke (18)は風速・気温・日射の3要素から計算される体感温度を提示し, Hendrick(5)は風速・乾球温度・湿球温度・日射の4要素の組み合わせに よるWCI(天気快適指数)を提示している.
18. 神山恵三(1962)体感温度.気象研究ノート, 12, 214-248.」

リンケの式を英語圏の記事で見つけることはできないようである。ミスナー ルの式やリンケの式を日本に持ち込んだのは神山恵三氏ではないかという気 がする。こちらも計算が簡単なので便利ではある。

リンケ体感温度(摂氏)
L(リンケ体感温度)=t- 4×√v
t:気温(℃)   v:風速(m/s)

ネット検索で次を見つけた。「体温を超えるような気温だと、風が吹くとか えって暑く感じられるようになることもあります。」砂漠地帯の猛烈な暑さ の中では冷房がなくても乗用車の窓を閉め切って走るという。窓を開けると 熱風で却って暑いのだという。風による寒さを表現するリンケの体感温度を 高い気温で使ってはいけない。

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